「どうして、碁の才能が全くないということに気がついたのですか」と町会長。

「碁の才能がある人は、小さい頃から碁や将棋が好きで、毎日打っているうちに、小学生くらいでアマチュアの5、6段くらいになるようです。」

「渡辺さんは毎日碁を打つということはなかったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。天野先生が春休みに、碁の打ち方を教えてくれて、その日の1局は初勝利に終わったのに、碁を明日も打ってみたいというような気にはなりませんでした。」

「なるほど。それでは碁に向いているとは言えないかもしれませんね。」

「そうなんですよ。大学の同級生に、永井というアマチュアの5段格のがいました。永井は兄貴と小さい頃から碁を打っていると言っていました。永井は負けたくないので、時間をかけて考えてから打つのだが、兄貴は俺が打った瞬間に全く考えないで打つというのです。」

「それで、どっちが強いのですか」と町会長。

「どっちが強いかは聞かなかったのですが、碁会所に行くと二人とも5段だと言ってました。」

「なるほど。碁の才能のある人は、毎日遊びで打っているうちに、5段くらいになってしまうのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。僕の場合、碁を教えてもらったとき興味を引いたのは、将棋と違って終わりが分かりにくいということでした。基本的なルールは最初の日に分かったし、勝ち負けの決め方も分かったのですが、どうなれば終局になるのかということが、なんとなくしか分からなかったのです。」

「将棋は王将を取れば勝ちですが、囲碁には王将がありませんね」と町会長。

「おっしゃる通りです。それで、初心者向けの囲碁の本を買いました。」

「その本を読んだら、どうなれば終局か分かったのですか」と町会長。

「その本には、対局者が二人ともパスをすると終局になると書いてあったのですが、どういう状態になるとパスするのかというのが分かりませんでした。」

「本を読んでも分からなかったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。そんな状態のとき、父が折り畳み式の囲碁セットを買って来たのです。」

「それで、実際に囲碁を打つようになったのですね」と町会長。

「週に3局ぐらいのペースで打ったと思います。」

「3カ月くらいで、お父さんに勝てるようになったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。終局が良く分からないので、さらに、囲碁の本を買って読んだので、強くなるのが早かったのだと思います。もう一つ勝てた原因は、父も天野先生も碁が弱かったのです。」

「お父さんは、どのくらいの実力だったのですか」と町会長。

2020/6/11

<ムクドリ32>
SDI-WORKSのウェブページの『お問い合わせ』を使って、『NEW囲碁塾詰碁の達人Ⅳ高段者編 "取る"320問のヒントの示す位置に黒石を打った時、その一路下に白石を打てば、白は生きているのではないでしょうか』と、間違いを指摘すると、『【Sdi-Works】へのお問い合わせを受け付けました』とメールが届いた。『しっかりした会社だな』と感心した。囲碁人口は少ないので、ここまで商売熱心にやっているとは予想していなかったのだ。

メールは即日届いていたが、僕は回答が来るのに1週間ぐらいはかかるだろうと思っていた。普通、メールで問い合わせると、回答が来るまでに2,3日はかかる。今回の場合は、詰碁の作者に連絡し、その回答を見て僕に回答しなければならないから1週間はかかるだろうと推定していた。仮に、詰碁が得意な棋士が常駐していたとしても、2,3日はかかるだろうと推定していた。

それで、翌々日メールを調べてみた。驚いたことに、前日の朝、回答が届いていた。『実に素晴らしい会社だな』と感心した。メールには、『「詰碁の達人Ⅳ」ご愛用ありがとうございます。320問のヒントは一線に大ゲイマですね。
もし白2をその一路下にツケてくれば、素直に白2の右に打って白取られです。
オイオトシにもならず、白には生きるスペースがありません』と書いてあった。

この回答を読んで、『プロの棋士が常駐しているんだ。すぐ返事をくれたのは、高段者問題を解くような人の中に、自分の実力をわきまえないで詰碁の問題の間違いを指摘するような人がいないからだろう』と思った。しかし、このプロが説明した『オイオトシにもならず』は、最初に320問を解こうとした時に読んでいた。問題はその先にあるのだ。そのため、『320問は、やっぱり、間違いなんじゃないか』と思ってしまった。すると、突然、今まで体験がしたことがないような、異様な変化が全身に起こった。ものを考えることもできないような状態だった。<続く>

2023/5/25